外科 治療・手術について 下部消化管(大腸)

診療・各部門

下部消化管(食道・胃)

大腸がんについて

 現在、日本国内で1年間に11万人も大腸がんと診断されております。すべてのがん種の中で、大腸がんは男性で3位、女性で1位の多さです。男女全体では肺がんに続いて2位です。高齢化や食生活の欧米化などでここ数年、大腸がんは増加傾向です。

 そもそも大腸は全長1.5~2メートルの管腔臓器で、小腸で消化・吸収された液体状の食べ物の残りかすから水分を吸収する働きがあります。その結果、食べ物の残りかすは固形の便となり、肛門から排泄をします。大腸がんは大腸の粘膜から生じます。

 大腸がんの進行度は大腸壁深達度(腫瘍の深さ)・リンパ節転移の有無・遠隔転移の有無で決まります。進行度(ステージ)は0,1,2,3,4に分けられます。

 大腸がんの症状として、血便・便秘・下痢・腹痛・腹部膨満・残便感・便が細くなる、などが挙げられます。
 検便検査による便潜血陽性であれば、大腸内視鏡検査を行い、早期に診断される場合があります。

直腸は約20cmの長さで大腸の末端部で肛門に至ります。

大腸がんに対する治療は、大腸カメラを用いた内視鏡手術と、外科切除に分けられます。

 外科切除はがんを含めた大腸の切除ならびにリンパ節郭清が基本です。大腸は管腔臓器ですので、大腸切除後に再建(吻合)することが基本ですが、直腸がんで肛門との距離が確保できない場合や腫瘍が大きくて腫瘍そのものを切除出来ない場合、栄養状態や様々な条件で吻合しても縫合不全のリスクが高いと考えられる場合は、吻合せずに人工肛門造設を選択します。

 手術は開腹手術・腹腔鏡手術が選択されますが、最近は腹腔鏡手術の割合がかなり高くなってきております。

 腹腔鏡手術のメリットとして、

1)ハイビジョンカメラを用いた拡大視効果により、より精緻でクオリティの高いリンパ節郭清・再建が出来る
2)腹壁破壊が少ないため、腹痛が軽減し、早期離床が期待できる。
3)整容性がよい。創感染も少ない。
4)術中に腸管を体外に露出しないので、腸管が乾かない。その為、腸管蠕動の回復が早い、腸閉塞のリスクが減る

 などのメリットがあります。

 また直腸がんに対して、当院ではダビンチという手術支援ロボットを用いた手術も行っております。

患者さんのための大腸癌治療ガイドライン:2014年度版 金原出版 より

エチコン社:HPより https://www.ess.jjkkpro.jp/material/anatomy06

ダヴィンチ手術について

 当院では直腸癌に対する“ダヴィンチを用いた腹腔鏡下直腸切除術・切断術”を2020年1月から山口県内で先駆けて導入しております。

 最近、食事の欧米化や団塊の世代の高年齢化などにより、直腸癌手術件数は年々、増加傾向となっております。直腸癌手術においても昨今は低侵襲かつ骨盤深部の操作が開腹手術よりメリットのある腹腔鏡手術がスタンダードとなってきております。しかし肥満などの手術困難症例も多くなってきており、それ以外にも狭骨盤の男性・直腸下部に存在する癌・大きな癌などでは術中の視野展開が困難であり、腹腔鏡手術でも時間がかかってしまい、切除自体に難渋することがあります。

 一方、ロボット支援手術ではダヴィンチの手術器具の先端が指のように自由に曲げることができるため、術野での繊細な操作が可能となります。特に重要な神経や血管の密集した骨盤底で操作を行う直腸癌手術では、繊細な手術を行うことにより根治性、肛門・排尿・性機能などの機能温存の向上が期待できます。直腸に密接する骨盤神経叢(排尿や性機能を担っている神経)を繊細な操作で丁寧に温存することにより、術後の排尿・性機能の保持や早期の回復が期待され、後遺症の少ない、体に優しい手術が可能となります。

 現在、当院では直腸癌に対する腹腔鏡下手術は一般化してきておりますが、上記の理由で患者様へのより優しい治療を行うべく、“ダヴィンチを用いた腹腔鏡下直腸切除術・切断術”を行っております。
(腹腔鏡手術も併せて行っており、どちらの術式をご希望されるかは患者様に選択して頂いております)。

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