診療・各部門
呼吸器、縦隔の病気
気胸;
気胸とは肺から空気が漏れて胸腔に溜まり肺が虚脱(肺がしぼむ)する病気です。自然気胸と続発性気胸に分類されます。自然気胸は10〜20歳代の男性に多く発生します。ブラと言われる肺の弱い部分から空気が漏れる状態で、自覚症状としては胸部痛、呼吸苦、咳が三主徴といわれます。治療法は自覚症状や肺の虚脱状態から判断し安静や胸部にチューブを留置する胸腔ドレナージが行われます。このような保存療法で治癒しない場合や気胸が再発する場合は、胸腔鏡下肺部分切除術を行います。0.5〜1.5㎝程度の小切開を3ヶ所加え、手術操作を行う鉗子を挿入するトラカールと呼ばれる器具を装着します。ここから、肺の弱い部分を切除します。創が小さく低侵襲なので術後数日で退院できます。続発性気胸は外傷や肺気腫などの基礎疾患がある場合に起こる気胸です。治療は自然気胸とほぼ同様です。
肺癌;
肺癌は気管支や肺胞から癌が発生する原発性肺癌と他の臓器に発生した癌が転移した転移性肺癌に分類されます。右肺は上葉中葉下葉の3葉、左肺は上葉下葉の2葉に分かれています。
原発性肺癌に対する手術は病期(ステージ)や呼吸機能などから切除範囲を決定します。癌が存在する部位の葉切除術+リンパ節郭清(リンパ節を切除します)が基本ですが、それより狭い範囲を切除する肺区域切除術も行っています。状況によっては、さらに小さい切除の肺部分切除術を行うこともあります。肺葉切除術や区域切除術は2〜4㎝の皮膚切開2ヶ所と0.5~2㎝の皮膚切開2ヶ所で行う胸腔鏡手術を行っています。従来の15〜20㎝の切開を行う開胸手術より術後の創痛が少なく、低侵襲で回復が早いと言われています。
ダビンチ手術(ロボット支援下胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術)について
当院では肺癌に対するダビンチを用いたロボット支援胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術を、2024年6月から開始しました。これまでも低侵襲手術である胸腔鏡手術を行ってきましたが、さらに低侵襲と言われているロボット支援胸腔鏡手術を導入しました。
最近、肺癌の罹患率の増加と高齢化により肺癌手術が増加してきています。肺癌手術は以前は胸に20~30㎝の皮膚切開を加える、大きな侵襲を伴う手術でした。胸腔鏡手術が導入されると、最大手術創が8㎝以下になり、入院期間が短縮されました。胸腔鏡手術が開胸手術より低侵襲である証明とされています。ロボット支援胸腔鏡手術は従来の胸腔鏡手術より低侵襲ではないかと言われています。
ダビンチは自律的に動くわけではなく(ロボットが自分で考えて行動するのではありません)執刀医が操作しますが、執刀医のわずかな手ぶれも感知して手術野では手ぶれを防止し、理想的な切開線を切開・剥離します。また、立体的に見える(3D)モニター下で手術するため、胸腔鏡よりさらに精密な手術が可能です。ダビンチの手術器具は先端に関節が付いておりいろいろな角度から切開や剥離が可能です。さらに理想的な角度から操作できることで、出血量の減少や神経損傷の低減が図れます。このようにロボットの機能を活用し、低侵襲を求めているのです。
