病院長挨拶

病院長写真

当院は、昭和21年に社会保険病院として設立されて以来、今日のJCHO徳山中央病院に至るまで、周南医療圏の中核病院の役割を担ってまいりました。そして、独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)が設立してから10年が経過し、本年で79周年を迎えます。

昨年を振り返りますと、能登半島地震をはじめ、夏の猛暑や記録的大雨など、自然災害が相次いだ年となりました。海外では、ウクライナや中東の戦争がなかなか終結せず、また世界中の多くの国々で政情不安に直面しました。国内では、少数与党の石破政権が誕生し、アメリカではトランプ氏が政権に返り咲くなど、国内外ともに先行きが見通しにくい時代となりました。

医療界ではコロナ禍にいったん区切りがついたものの、胸を撫で下ろす間もなく、いわゆる三位一体改革(地域医療構想、医師偏在対策、働き方改革)が動き始めています。地域医療構想調整会議では、将来の医療需要を見据え、医療機能の役割分担・連携の取り組みが進められ、昨年4月からは医師の働き方改革もスタートしました。

また、病院経営では、昨年の診療報酬改定に呼応するかのように、薬剤費、医療材料費の増加、物価・光熱費の上昇、医療機器の購入更新費用や人件費の高騰が続いており、医療を取り巻く環境は極めて厳しい状況にあります。

今年は、国民の5人に1人が後期高齢者となる超高齢化社会の始まりを迎える年です。少子高齢化、人口減少と社会は急速に変化しており、労働力不足や社会保障制度の弱体化、医療従事者の不足に伴い医療・福祉サービスが受けにくくなるなど、様々な問題が生じることが懸念されています。これらの対策として、すでに身近なところでは、コンビニエンスストアやファミリーレストランをはじめ、社会インフラの至るところでデジタルトランスフォーメーション(DX)が推進されているのを実感するところです。

すでに政府は医療DXの推進に向けマイナンバーカードを健康保険証として利用すること(マイナ保険証)や電子処方箋の導入を推進しています。これらは全国医療情報プラットフォーム構築など、行政の効率化が主な目的であり、もちろん重要なのですが、医療現場においても、医療の質や生産性の向上、医療スタッフの負担軽減、働き方改革を推進するために、医療DXの活用が必須と考えます。医療DXの導入には莫大なコストがかかりますし、課題も抱えてはおりますが、来るべき環境に適応していくためには一つ一つ着実に取り組んでいかねばならないと考えております。

JCHOの理念は地域の住民の皆様、行政、関係機関と連携し地域医療の改革を進め安心して暮らせる地域づくりに貢献していくことであります。当院は5疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、精神疾患)6事業(救急医療、災害時における医療、へき地医療、周産期医療及び小児医療,新興感染症対策)すべてに取り組んでおりますが、現在、災害拠点病院としてより一層の機能充実を図るべく新棟建設中です。今後も高度急性期・急性期医療と安全で質の高い専門医療を地域社会に提供し、社会に貢献できるように職員一同切磋琢磨してまいります。新棟完成までいろいろとご不便、ご迷惑をおかけしますが、ご理解とより一層のご支援を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

令和7年2月

独立行政法人地域医療機能推進機構
徳山中央病院
院長  沼 文隆