救急蘇生法 -講習会のお知らせと当院の取り組み-

《当院の緊急時・救急蘇生法への方針》

病院には、心肺停止状態で運ばれてこられる患者様がおられます。 また心肺停止の危険性のある病気を持たれた患者様や重症な患者様が入院しておられます。 一方、基礎疾患や入院に至った病気以外で、生命の危機に陥る患者さんがおられます。 それ以外に、患者様や付き添いの方も含めて、病院の外来や病室で、突然予期せぬ心肺停止が起きることがあります。
突然危険な状態になった場合には、素早く適切に対応することが重要です。 そのため、当院では職員が緊急時の処置や救急蘇生法を身につける研修を行っています。 また、危機的な状態に陥ることを防ぐ目的で、早期対応チームの編成に向けて取り組んでいます。

一方、当院以外の医療従事者の方や市民の皆様にも救急蘇生法を覚えていただけるように、それぞれ必要なレベルでの普及活動にも力を注いでおり、特に市民の方には心肺蘇生法とAEDの使い方を学んでいただくための講習会を出張で随時行っています。

【市民の皆様への心肺蘇生法の講習指導】

救急蘇生法(心肺蘇生法とAEDの使用方法)の講習を希望される方は救急科 宮内善豊医師に、電話、メール等でご連絡ください(電話 0834 28-4411)。

当院では医師が、院外で救急蘇生法(心肺蘇生法とAEDの使い方)の講習を無料で行なっています。 1996年から実施していて、これまでに800回以上実施しています。
一般市民の方、学校の教職員や父母などを対象にしていて、学校や各地域、職場等で講習を行っています。 また、学校などからの要望により、小学生、中学生、高校、大学等の児童、生徒、学生の方々にも講習を行っています。
講習時間は講義と実習を合わせて約1時間としていますが、ご要望の時間で行っていますし、少人数でも実施しています。
参加された方々に応じて、理解しやすいようにわかりやすく説明することを大切にしています。堅苦しくなく楽しく学べるように工夫をしていますので、気軽に講習を受けてください。 これまでの講習は非常に好評です。
なお、実習に必要な物品(資料、人形やAEDの練習器など)は当方で準備いたしますので、ご心配はいりません。 日時はできる限りご希望に沿えるようにいたします。
これまでに、山口県では市民の方がAEDを使用して市民の方を救命した事例があります。 また、AEDを使用しなくても、救急蘇生法の実施により救命した例もあります。
あなたの大事な人や身近な人を助けるためにも、救急蘇生法を覚えてください。

救急蘇生法の基本的な実施方法は世界的に共通になるように国際標準が定められています。 世界的に統一された方法は2000年に始まりましたが、5年ごとに改訂されています。2020年版が最新のものです(コロナ感染症のため1年遅れて2021年に発表されました)が、 この新しいガイドラインに基づいた救急蘇生法のやり方(資料)で講習を行います。 以前に講習を受けられた方にも、新しい情報をお伝えしていきます。
救急蘇生法のやり方は簡単になってきています。 一人でも多くの方を救うために救急蘇生法を知っておくことが大切です。

[命を守るために]

心肺停止になった傷病者を救命するには、救命の連鎖を上手くつなげることが大切です(資料を参考にしてください)。 まずは心肺停止の予防に努めることが大切です。 普段から健康に注意すると共に、体の変調に早く気付き、心停止になる前に病院を受診することが大切です。
次に、心肺停止した方の救命のためには、救急車を呼び、傍にいる人がすぐに救急蘇生法(心肺蘇生法)を開始し、AED(自動体外除細動器)を使い、病院への搬送がスムーズに行なわれ、その後の集中治療が行われることが重要です。
しかし、経験のない方が心肺蘇生法をとっさに行なうことは難しいと思われます。 救急蘇生法の講習を受けておられると落ち着いて行動することができます。

[心肺蘇生法とその後の治療の重要性]

突然、心肺停止になった場合には、原因がなんであれ、直ちに心肺蘇生法を開始することが重要です。 これは心臓を復活させるということ以上に、脳の機能をまもるという目的があります。
心肺停止状態がしばらく続いても、心臓は正常に復活することがありますが、脳は酸素不足に非常に弱い臓器ですから、脳への酸素供給が3~5分停止すると重症な脳障害が起きてしまいます。 つまり、心肺停止状態で、酸素を含んだ血液が3~5分間脳にいかなかった場合、心臓が再び動き出しても脳障害が残ってしまいます。
脳障害を防ぐには、一刻も早く心肺蘇生法を開始すること、特に胸骨圧迫(心臓マッサージ)を開始し、その後は、「強く」、「速く」、「絶え間なく」行うことで、脳に血液(酸素)を送り続けることが重要です。
そして心臓が再び動き出すための治療や心拍が再開した後の集中治療が大切です。
当院には、そのための設備が集中治療室(ICU)や救命センターに備わっています。
心肺蘇生法を行ない、救命につなげるために重要なことは、あらゆる医療従事者がチームとして治療に当ることです。
このため、当院では病院全体として、職員がICLSコースや救急蘇生法の研修を行っています。
このような、救急蘇生法への取り組みによって、一度心肺停止になった患者様を救命し、当院での高度な医療により社会復帰させることが可能になるものと考えています。
当院は救命救急センターでの救急医療の充実とともに、職員が救急蘇生法を身につけて医療にあたり、患者様が安心して当院を受診でき、当院が地域の医療に貢献できる礎になるものとして、今後更に研修や講習を進めていきます。 また、救急蘇生法の地域への普及にも努めていきます。

《当院の具体的な取り組み》

当院では、2009年末から職員が救急蘇生法を習得するための研修を行っています。
具体的には、医師、看護師、薬剤師、臨床工学技士等は、チームで行なう救急蘇生法(ICLSコース、後述しています)、他の職種の方はBLSの研修を行なっています。 職員全員が救急蘇生法を習得するとともに、知識や技術を維持するために、再教育・研修を繰り返しています。

[ICLSとは]

「ICLS」とは「Immediate Cardiac Life Support(すぐに行なう救命処置)」の頭文字を取った略語です。
ICLSコースとは、日本救急医学会が推進している医療従事者のための蘇生トレーニングコースで、緊急性の高い病態のうち、特に「突然の心停止に対する最初の10分間の対応と適切なチーム蘇生」を習得することを目標にしています。 ICLSコースでは、あらゆる医療者が身につけておくべき蘇生の基本的事項を習得できるようになっています。 医師、看護師、薬剤師、検査技師、臨床工学技士、医学部生、看護学生など、医療に携わる方々が対象となっています。
講義室での講義はほとんど行わず、実技実習を中心にしています。 受講者は少人数のグループ(1グループは6人まで)に分かれて実際に即したシミュレーション実習を繰り返し、約1日(8時間)かけて蘇生のために必要な技術や蘇生現場でのチーム医療を身につけます。
身につける行動の目標は以下の通りです。

  • 蘇生を始める必要性を判断でき、行動に移すことができる
  • BLS(一次救命処置)に習熟する
  • AED(自動体外式除細動器)を安全に操作できる
  • 心停止時の4つの心電図波形を評価・判断できる
  • 電気ショックの適応を判断できる
  • 電気ショックを安全かつ確実に行なうことができる
  • 状況と自分の技能に応じた気道管理法を選択し実施できる
  • 気道が確実に確保できているかどうかを判断できる
  • 状況に応じて適切な薬剤を適切な方法で投与できる
  • 治療可能な心停止の原因を知り、原因検索を行動にできる

実習には特殊な人形や多くの資器材が必要ですが、これらの物品もすべて整備しています。

なお、ICLSコースの詳しい内容につきましては、日本救急医学会のホームページをご覧下さい。(外部サイトに移動します。)

[当院のICLSコース]

ICLSコースを当院内で実施しています。
日本救急医学会が認定する(一定の基準を満たした)ICLSコースとして開催するためには、認定されたコースディレクターやインストラクターが必要です。 当院には有資格者がいて、常に認定されたICLSコースとして実施しています。
1日に2ブース(会場)で実施していますが、1ブース当りの受講者は6人以内という制限があるため、受講修了者を一度に増やすということはできません。 しかし、病院の機能を向上させ、患者様の安全を守るという強い意識の下、日曜日にICLSコースを実施しています。
受講者だけでなく、指導者も休日返上でコースの開催を行ない、回数を重ねることにより、コース修了者を次々増やしています。
これからも、院内での開催を続け、職員全員が高度な救急蘇生法を身につけ、患者様が安心して当院での医療を受けられるように努めていきます。
現在勤務している職員(医師、看護師、技士など)だけでなく、新入職者は必ずICLSコースを受講します。 また再教育も定期的に行っています。
地域の医療従事者の方にもICLSコースへの参加を呼びかけていて、地域の医療充実に貢献しています。
ICLSコースへの参加等につきましては、総務課にお問い合わせください。

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