ポジトロン断層撮影(PET)は、人間のエネルギー源であるブドウ糖(グルコース)の代謝に着目し、疑似ブドウ糖であるFDG(フルオロデオキシグルコース)という薬を体に注射して、それがどこに吸収されるかを調べる核医学の検査法です。
FDGにはフッ素(18F)という物質が含まれ、ここから陽電子(ポジトロン)が放出され、マイナスの電子と反応してγ線(ガンマー線:放射線の一種)が発せられます。PETはこのγ線を捉える装置です。健康な人にFDGを注射すると、脳や心臓、運動している筋肉などに吸収されます。また、FDGを吸収した組織だけが光って見えますが、がん細胞は消費するブドウ糖が正常な細胞よりも3~20倍も多いので、それだけ多量のFDGを吸収するため、よく光ります。これがPETによるがんの診断の原理です。
ただ、PETの弱点は画像が不鮮明なことで、光っているところを正確に特定することが困難な場合があります。そこで、体の内部構造を正確に描出してくれるCT(コンピューター断層撮影)の画像に重ね合わせるというアイデアが生まれ、PET/CTが開発されました。
PET/CT検査の特徴
● 全身を診る
たった一度の撮影で、全身の状態を診ることができます。
● 驚くほど楽
検査時間は約3時間で、痛みは薬剤を静脈注射する際の注射時痛のみ。
あとは横になっているだけなので、苦痛がほとんどありません。
● 良・悪性の鑑別
検査によって得られた画像で良性・悪性の鑑別ができます。
● 転移や再発
全身検査だから、離れた部位への転移や再発の発見が可能です。
● 安全な検査
検査による被ばく量は、X線による胃の透視(バリウム検査)と同等程度です。
たった一度の検査で苦痛もなく簡単に多くの種類のがんを見つけ出すことができる検査は、PET/CTしかありません。それほどPET/CT検査は画期的なものです。しかし、決して万能は検査ではありません。
一言で言えば、固まりをつくるがんほど見つけやすく、薄くひろがるほど見えにくのです。5mm程度でも固まりをつくっていれば見える場合もあり、逆に1cm以上でも薄く広がっているがんの場合は、見えにくくなります。また、がんの悪性度が高いほどブドウ糖の代謝が活発で、FDGの散り込みも多くなり、見えやすくなりますが、悪性度の低いがんは、FDGの取込が少なく、それだけ見えにくいのです。これらの特性を見極めた上で、検査を行う必要があります。
● 見つかりやすいがん
頭頸部がん、乳がん、肺がん、食道がん、大腸がん、すい臓がん、
子宮がん、卵巣がん、悪性リンパ腫、悪性黒色腫、転移性肝がん
● 見つかりにくいがん
肝臓がん、腎臓がん、前立腺がん、膀胱がん、一部の肺がん、
その他1cm以下の小さながん
PET/CTへの過剰な期待は禁物ですが、その特性を見極めた上で、他の様々な検査を効果的に組み合わせることが相乗効果を生み、がんの発見率を高めます、これが現在考えられる最良の選択と考えています。
がん克服への第一歩、それはできるだけ早くがんを見つけることです。転移していない早期の段階でがんを発見できれば、最適な治療を受けることで生存率は高まります。しかも、治療コストを抑えることにも繋がります。求められるものは、PET/CT単独の検査ではなく、総合的ながん検診なのです。
PET/CT健診コース
全身PET検査とマルチスライスCTをセットにしました。がんと肺を重点的にチェックしたい方、喫煙者にお勧めです。
● 検査内容
健康調査 |
既往歴・自覚症状・他覚症状 |
医師の診察 | 一般診察・問診・胸部聴診・腹部触診 |
身体計測 | 身長・体重・肥満度・BMI・体脂肪率 |
画像診断検査 | 全身PET検査・胸腹部マルチスライスCT |
循環器系検査 | 血圧測定 |